障害年金の社会的治癒とは
障害年金には、請求者の利益を守るため、社会的治癒という考え方があります。
社会的治癒の考え方自体は難しくありません。しかし、それを証明していくことが難しく、
結果的に必ず適用されるというものでもありません。
【社会的治癒の考え方】
社会的治癒とは、治療を行う必要がなく(注1)症状が安定し、通常の生活が可能であったり、就労等により社会復帰していることが認められる状態が一定期間(注2)ある時は、医学的には治癒していなくても社会保険の運用上、治癒したとみなされることがあります。これが社会的治癒です。
(注1)「治療を行う必要がなく」とはいうものの、予防的・維持的・経過観察的な最低限の治療が継続されている場合は、社会的治癒を認めるとされています。
(注2) 「一定期間」とは病気によっても異なりますが、概ね5年以上の期間が目安とされます。
社会的治癒とは、簡単に言えば「同じ傷病を分割して、新しく初診日を取得することができる取扱い」であると言えます。基本的に、同じ傷病での初診日は前医がない限り変更できません。
しかし、客観的に治療の必要がない期間が長期間継続して、例えばその間に就労して一定の期間働くことができているような方が、再び症状が悪化して障害年金の要件を満たすような状態になった場合、初診日後に納付した保険料が障害年金の額に反映されないことになります。これは、障害年金の制度上、初診日が保険料納付の基準となる日だからです。
このような不利な取扱いを是正するため、設けられているのが「社会的治癒」の考え方です。治癒していると考えられる期間がある場合、医学的には同じ傷病であっても「前の病気」と「後の病気」に分割し、これを別の傷病として扱ってそれぞれ初診日を認めるという方法が取られています。
この取扱いによって、上記の例では障害年金の額が増加したり、保険料納付要件を充足して請求が可能となったりというメリットがあります。
しかし、社会的治癒は法律や規定として定義されたものではなく、取扱いとして運用されているものです。そのため、治癒した期間がどの程度を指すのかは明確に決められておらず、障害認定基準にも書いてありません。実際の認定においても事例ごとに検討されています。
該当する可能性のある方は、ぜひ一度ご相談ください。